厨房床に求められる性能
- 防滑性。濡れた状態、油が付いた状態で滑らないこと
- 耐薬品性。洗剤、油、酸、アルカリに侵されないこと
- 耐熱性。熱湯や高温の油が落ちても劣化しないこと
- 耐摩耗性。台車、什器の移動に耐えること
- 清掃性。汚れが入り込まず、洗い流せること
- 防水性。床から階下へ水が漏れないこと
これらは相反する部分があります。防滑性を上げれば表面が粗くなり、清掃性が落ちます。どこでバランスを取るかが設計の要点です。
転倒災害という観点
飲食業の労働災害で最も多いのが転倒です
厚生労働省の統計でも、飲食店での労働災害は転倒が上位を占めます。厨房の床は、水と油が混ざった状態になりやすく、通常のタイルやモルタル床では滑ります。
床の改修は、見た目の問題ではなく安全対策です。
工法の種類
| 工法 | 特徴 | 向く場所 |
|---|---|---|
| 水性硬質ウレタン系 | 耐熱・耐薬品に優れる。厨房床の主流 | 厨房全般 |
| エポキシ樹脂系 | 耐薬品性が高い。熱には弱い | 洗い場以外、倉庫 |
| 防滑トップコート | 既存床の上に骨材を混ぜた層を作る | 部分的な防滑対策 |
| 長尺シート | 貼り込み。継ぎ目の処理が必要 | 改修で工期を短くしたい場合 |
厨房床で広く使われているのは水性硬質ウレタン系です。熱湯に耐え、油や洗剤にも強く、防滑の骨材を入れられます。
防滑のレベル
骨材(硅砂など)の粒度と散布量で、防滑性の強さを調整します。
- 強い防滑。洗い場、フライヤー周辺。滑る危険が高い場所
- 中程度。調理場全般
- 弱め。配膳通路、ドライエリア
全面を最も粗い仕様にすると、掃除がしにくくなり、汚れが溜まって逆に不衛生になります。場所ごとに仕様を変えるのが実務的です。
下地の確認
塗床工事で最も重要なのは下地です。
- 既存の床材は何か(タイル、モルタル、既存塗床、長尺シート)
- 下地に含水がないか(コンクリートの水分は塗膜の膨れの原因)
- 油が染み込んでいないか(脱脂しないと密着しない)
- 勾配は取れているか(排水溝へ水が流れるか)
- クラックや欠損がないか
油の染み込みは厄介です
長年使われた厨房の床は、下地に油が浸透しています。表面を洗っても内部の油は残り、塗った後に油が上がってきて剥離することがあります。研削(ケレン)で表層を削り取る必要があります。
営業を止めない段取り
飲食店の厨房改修で最大の制約は、営業を止められないことです。
- 定休日に合わせる。1〜2日で完了する範囲に分ける
- 夜間施工。閉店後から翌朝の開店前までに仕上げる
- 区画を分ける。厨房を半分ずつ施工する
- 硬化時間の短い材料を選ぶ。翌朝から使える仕様があります
ただし硬化時間を無理に詰めると、性能が出ません。何時間で歩行可能か、何時間で本格使用が可能かは材料ごとに決まっています。
排水溝・グレーチング
床だけ直しても、排水溝が傷んでいれば水が滞留します。溝の内部も同じ塗床材で仕上げるか、既製品のグレーチングごと交換するかを検討します。
床の状態は写真である程度わかります
滑りやすい場所、剥がれている範囲、排水溝まわりの状態が分かる写真があれば、見るべき点を整理してお伝えします。あわせて営業時間と定休日をお知らせいただくと、工程の考え方もご説明できます。
よくある質問
一晩で終わりますか?
面積と下地の状態によります。下地の研削が必要な場合は時間がかかります。材料の硬化時間も含めて工程を組みます。
部分的に滑る場所だけ直せますか?
できます。フライヤー周辺や洗い場だけ防滑仕様にする、という対応も可能です。
保健所の基準はありますか?
床の材質について、清掃しやすく耐水性のある構造が求められます。具体的な要件は所管の保健所にご確認ください。