なぜ縁切りが必要なのか
スレート(カラーベスト)は、薄い板を下から上へ少しずつ重ねて葺いてあります。この重なりには隙間があり、そこから入った雨水が下へ流れて出ていく構造になっています。
塗装をすると、この隙間が塗料で埋まります。水の入口は完全には塞がらないのに、出口だけが塞がる状態です。入った水が滞留し、野地板や垂木といった下地材を湿らせ続けます。
結果として起きるのが、室内への雨漏り、野地板の腐食、釘穴の拡大による釘の抜け。いずれも塗装のやり直しでは済まず、葺き替えやカバー工法が必要になります。
塗装したら雨漏りするようになった、という相談の原因
「塗り替えたら前より雨漏りがひどくなった」というご相談があります。その多くがこの縁切り不足です。塗装前は隙間から抜けていた水が、塗装後に抜けられなくなったということです。
縁切りの2つの方法
1. カッターや皮すきで切り開く
上塗りが乾いたあと、重なり部分に刃を入れて塗膜を切る方法です。古くから行われてきたやり方ですが、屋根の上を歩きながら一枚ずつ作業するため時間がかかり、切った部分の塗膜が傷むという問題もあります。
2. タスペーサーを差し込む
塗装の前(下塗りのあと)に、重なり部分へ専用の部材を差し込んでおく方法です。塗料が乾いても隙間が確保されます。セイム社の「タスペーサー」が広く使われており、製品名がそのまま工法の通称になっています。
1枚あたり2個を差し込むのが標準です。屋根の勾配が緩い場合や、スレートの重なりが詰まっている場合は数を増やします。
| カッターによる縁切り | タスペーサー | |
|---|---|---|
| 作業時期 | 上塗り乾燥後 | 下塗り後・中塗り前 |
| 塗膜への影響 | 切った部分が傷む | 塗膜を傷めない |
| 手間 | 屋根を歩きながら一枚ずつ | 差し込むだけ |
| 見積書の記載 | 工程として書かれないことがある | 材料費として項目が立つ |
見積書で確認すること
縁切りは完成後に見えない工程です。やったかどうかは、屋根に上がらなければ分かりません。だからこそ、見積書の段階で確認しておく価値があります。
- 「縁切り」または「タスペーサー」の項目があるか
- タスペーサーの場合、数量(枚数または㎡)が書かれているか
- 「一式」でまとめられていないか
項目がない場合、含まれているのか省くつもりなのかを聞いてください。「うちは必ずやっています」という答えなら、見積書に書いてもらえば済む話です。
縁切りが不要なケースもあります
スレートの重なりが十分に開いている場合や、屋根材が金属・日本瓦の場合は縁切りは不要です。また、既に下地が傷んでいて葺き替えが妥当な状態であれば、塗装そのものをおすすめしません。どちらに当たるかは、屋根に上がって確認します。
よくある質問
縁切りをしないとすぐ雨漏りしますか?
すぐではありません。水が滞留した状態が続くことで、下地が数年かけて傷んでいきます。塗装から5〜10年後に雨漏りとして出てくることが多く、そのときには原因が縁切り不足だったと分かりにくくなっています。
タスペーサーは追加費用ですか?
材料費と手間がかかるため、見積書に項目として立つのが通常です。屋根塗装に含まれていると説明される場合もありますが、数量が書かれているか確認してください。
自分で縁切りされているか確認できますか?
屋根に上がらないと分かりません。ただし足場がある工事中であれば、職人に「縁切りはどうしますか」と聞くことはできます。